『ステロイドを使うのは抵抗が・・・』
 
日々診療を行っているとこんな声をよく耳にします。

では、
「ステロイド」とはどのようなものかご存知でしょうか?
 
副作用とはどのようなものがあると思いますか?


動物病院で処方されるステロイドとは、多くの場合、『プレドニゾロン』と呼ばれる
副腎皮質ホルモンの事を指します。

副腎皮質ホルモンは、副腎という臓器でコレステロールから合成されるホルモンです。
生体内で合成されるものですので、外からお薬として使用する場合は、当然様々な作用が出てきます。 

副作用とは、
医薬品の使用に伴って生じた治療目的に沿わない作用全般を指します。
 
つまり、目的によってはその作用が主作用(目的とする作用)であったり副作用であるわけなのです。
と、言うことは、ステロイドの起こしうる作用を知っていれば、自ずと副作用も見えてくるという事ですね。

では、ステロイドの作用にはどのようなものがあるのかを説明し、それぞれの作用に対し、問題となりうる点を挙げていきますね。

1.糖代謝に対する作用
肝臓で、アミノ酸(タンパク質が分解されたもの)からブドウ糖を合成(糖新生と言います)します。
『脳』がエネルギーとして利用できるのは『ブドウ糖』のみです(正確にはケトン体という物質も利用できますが)。
その為、糖分を摂取できないような緊急時には特にに重要な作用なのです。

【問題点】
血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上昇する為、糖尿病を発症するリスクが上がります。
また、『肝臓』で、ブドウ糖を合成するので、『肝臓』に負担がかかる為、肝臓の悪い子では使用を控えます。 


2.タンパク質代謝に対する作用
タンパク質(筋肉)を分解し、アミノ酸の産生を促進します。産生されたアミノ酸は1.の経路でブドウ糖へと変わります。

【問題点】
筋肉が痩せてきたり、皮膚が薄くなる(皮膚もタンパク質です)という症状が見られます。
クッシング症候群という副腎皮質ホルモンが過剰に出てしまう病気でよく見られます。 

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3.脂質代謝に対する作用
脂肪組織に作用し、脂肪の分解を促進。一部組織では脂肪の合成が促進します。

【問題点】
動物ではあまり顕著ではありませんが、四肢の脂肪が減ってきたり、顔の脂肪が増えてくる(ムーンフェイス)が見られることがあります。


4.抗炎症作用
炎症とは、熱感・疼痛・腫脹・それに伴う機能障害の事を指し、ステロイドはこの炎症反応を抑制します。

【問題点】
この作用は副作用として取られる事はあまりありませんが、この作用を目的としてステロイドを乱用する事で、副作用の発現に繋がる事があります。


5.免疫抑制作用
免疫とは、体を守る為に生体が持つシステムの事であり、一部の病気では、過剰な免疫反応が起こること(膠原病アレルギーなど)で、体に害を及ぼします。
ステロイドはこの免疫システムを抑制する働きがあります。
比較的高用量で使用することで免疫抑制作用を発揮します。

【問題点】
この作用はステロイドの持つ非常に優れた作用なのですが、感染症(ウイルス・細菌・寄生虫・真菌など)をもつ子に使用すると、時に重篤な症状を引き起こしたり、治りが悪くなったりする事があります。


6.利尿作用
抗利尿ホルモン(体内に水分を保持するホルモン)の働きを抑制することで尿量が増えます。

【問題点】
ステロイド使用時に、最も頻繁に見られる作用です。投薬を中止すればすぐにおさまるので心配はないですが、
尿を漏らすほど大量に尿をしてしまう子もいるので、注意が必要です。


7.骨・軟骨に対する作用
腸管や腎臓からのカルシウムの吸収を抑制します。
また、骨芽細胞(骨を作る素となる細胞)の増殖や分裂を抑制します。

【問題点】
成長期や骨折後など、骨芽細胞が活発化している時の使用は極力控えたほうが良いと考えられます。
動物ではあまり報告はされていませんが、人間の場合、骨粗鬆症のリスク因子とも言われています。



このようにステロイドには様々な作用があり、使い方を間違えなければ非常に優秀なお薬なのですが、使い方を間違える(乱用する)と、非常に危険なお薬になってしまう、諸刃の剣のようなお薬なのです。


ステロイドのリスクを回避するためには、
『何の目的で処方されているのか?』
を、飼い主さんが理解をし、惰性で使用し続けることは避けるべきだと思われます。


当院では、自己免疫疾患アレルギー、一部の腫瘍への免疫抑制作用と、椎間板ヘルニアなどの感染症を伴わない炎症性疾患への抗炎症作用を期待しての処方以外には基本的にステロイドは使用しません。

逆に考えると、これらの病気にはステロイドが欠かせないため、『ステロイド=悪者』という条件反射があると、良くなる病気も良くならないという可能性もありますので、ご注意くださいね。



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