こんにちは。

大津市のみらい動物病院です。

第2回目は、チャチャの病気である
『高悪性度消化器型リンパ腫』の概要を綴ります。

第1回目はコチラ



【診断方法】
腸管や腸管に付随するリンパ節から組織や細胞を採取して診断します。
血液検査やレントゲン、エコーといった検査では確定診断はできません


【診断基準】

ここが最もややこしいところです。
『悪性リンパ腫』という診断は細胞や組織を採取することで比較的容易に診断ができるのですが、
悪性リンパ腫の中でも更に細かく分けられ、それにより予後や治療方法というものが大きく変わってきます。
では、チャチャの検査結果を見ながら説明していきます。

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 赤枠:悪性リンパ腫の細かな分類基準
・NCL-WF分類
アメリカでよく用いられる分類法。
グレード評価は低グレード・中間グレード・高グレード・Miscellaneous(雑多な)に分類。
T細胞、 B細胞の分類は無い。

・Kiel分類
ヨーロッパでよく用いられる分類法。
グレード評価は低グレード・高グレードの2段階に分類。
T細胞、 B細胞の分類がある。

・WHO分類
グレード評価はされていない。
T細胞, B細胞の分類がある。
腫瘍細胞の形態に基づき細かく分類をされており、最も腫瘍の本質を見ている基準だが、
一般的には理解しにくい(グレード分類がない為)。

※グレード≒悪性度と理解してもらってOKです。低グレードは悪性リンパ腫の中でもまだ悪性度が低いという事
※腫瘍というものは無秩序に分裂・増殖をする為、予想もしない挙動をとることもあります(低グレードに見えても高グレードの挙動をとる場合もあるので、『絶対』ではない)。
※他にも『未分化』『高分化』 など記載されている事もある。正常な細胞は発生してから徐々に成長(分化)していき、成熟する。『未分化』とは、成長していない細胞の事で、正常細胞とは大きく形態が異なる。
一方『高分化』とは、ある程度成熟した細胞であり、正常細胞と形態が似ている。

悪性リンパ腫に限らず、腫瘍とは、正常細胞との形態がかけ離れているほど(未分化であるほど)悪性度が高いと考えられる。 


チャチャの場合、NCL-WF分類及びKiel分類では高グレード(≒高悪性度)で、かつ、B細胞性の悪性リンパ腫になります。
現状、猫の悪性リンパ腫において、B細胞かT細胞で予後に統計学的な有意差はありません。

つまり、大切なのは、低グレードなのか高グレードなのかということになり、NCL-WF分類における中間グレードの場合は、高グレードと同等の治療をする事が多くなっています(実際は臨床症状を見ながらですが)。

東京大学動物医療センターでは、Kiel分類において低グレード及び高グレードのリンパ腫と診断された猫の生存期間中央値は、113日vs67日という報告をしています。


青枠:ステージ分類
ステージ分類とは、グレード分類とは異なり、進行度を表しています。
簡単に言うと、早期のガン、末期のガンというものです。
以下が、猫のリンパ腫の臨床ステージの1つです。

  • ステージ1 単一の腫瘤(節外性)または単一の臓器(節性のみ)
  • ステージ2 単一の腫瘤(節外性)及び所属リンパ節;横隔膜を越えない2つの腫瘤(節外性)または節性病変;切除可能な消化管腫瘤
  • ステージ3 横隔膜を挟んだ2つ以上の腫瘤(節外性)または節性の病変;脊髄・硬膜外のリンパ腫;全ての切除困難な腹腔内腫瘤
  • ステージ4 肝臓および/または脾臓に浸潤したステージ1~3のリンパ腫
  • ステージ5 中枢神経または骨髄のいずれかまたはいずれにも浸潤したステージ1~5のリンパ腫
  • サブステージ a:臨床症状がない b:臨床症状がある
チャチャの場合、切除困難な腹腔内腫瘤があり、削痩・嘔吐などの臨床症状も見られた為、ステージ3-bと判断できます。

ただ、猫のステージは、複雑であり 、また、ステージによる予後評価や治療の変更の必要性に関する情報は少なく、どこまで意義があるのかははっきりしていません

緑枠:予後評価
犬のリンパ腫では予後と関連するいくつかの因子が報告されていますが、猫の高悪性度消化器型リンパ腫の
予後因子は明らかにされていません

ただ、予後因子として可能性のあるものとしては(消化器型リンパ腫だけでなく全ての猫悪性リンパ腫)、

・FeLV(猫白血病ウイルス)感染の有無
生存中央期間:FeLV陰性=7ヶ月vsFeLV陽性=3.5ヶ月
抗がん剤への耐性が出来やすい

・治療に対する反応
生存期間中央値:完全寛解症例7ヶ月>部分寛解症例2.5ヶ月>治療への反応なし1.5ヶ月

・臨床徴候の有無
前述したステージ分類におけるサブステージb(臨床徴候がある)場合の方が予後は悪いとされる


以上です。
書いていて感じたのは、やはり猫のリンパ腫はデータが少なすぎるということ。
はっきり分かっているのは、高グレードの方が低グレードよりも悪いということだけです。
ただ、症例自体は増えているので、今後いろいろな事が分かってくると思います。

次回は、チャチャの具体的な治療方法について書いていきます。



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